株式会社iishinaは、下水道管やトンネルなどの管渠内を360度動画で撮影し、SfM(Structure from Motion)技術によって三次元モデルを生成・点検する「管渠内構造物の三次元復元点検システム」について、特許を出願しましたのでお知らせします。
背景:見えない地下インフラの点検課題
下水道管やトンネルをはじめとする管渠は、社会インフラとして全国に広く敷設されており、その多くが老朽化の時期を迎えています。管渠内部には亀裂・腐食・浸入水・段差などの損傷が生じやすく、定期的な点検と適切な補修が不可欠です。
しかし、人が直接立ち入ることが難しい長尺管渠では、カメラを搭載した移動体で内壁を撮影して損傷を確認する手法が一般的です。従来の方式では、損傷の「有無」は確認できても、基準点からの正確な距離や損傷の実寸法を定量的に把握することが難しく、補修工事の際に掘削位置を誤るなどの問題が生じていました。
今回の発明:動画から高精度な3Dモデルを生成し、損傷を実寸で特定
本システムは、管渠内を移動しながら360度カメラで撮影した動画データを入力として、以下の処理を行います。
① 高品質な画像の選別
ブレ・ボケが多いフレームや、撮影装置が停止している「滞留区間」の画像を自動で除外・低重み化することで、誤った3次元復元の原因となる画像を事前にフィルタリングします。
② 時系列順の逐次アライメント
抽出した画像を撮影の時系列順に整列し、順次追加しながら三次元モデルを構築します。単調な壁面模様が連続する管渠内でも、時系列情報を活用することで誤マッチングを抑制します。
③ 直進拘束による累積誤差の低減
管渠が実質的に直線状であるという前提を拘束条件として与え、カメラ軌跡が不自然に湾曲・蛇行することを防ぎます。始点・終点を固定することで、長尺区間における累積誤差も大幅に低減します。
④ 既知寸法情報によるスケール補正(本発明のコア技術)
設計図面の管渠延長距離、管渠部材の長さ、マーカー間の距離、索状体の繰出量などの「既知寸法情報」を用いて、三次元モデルのスケールを実寸に整合させます。特徴点の対応関係よりも既知寸法情報を優先的に重み付けする独自の最適化処理により、長尺区間でも実スケールの精度を担保します。
⑤ AIによる損傷検出と3Dモデルへの対応付け
学習済みモデルを用いて亀裂・腐食・欠損・浸入水・段差を自動検出し、補正済みの3Dモデル上の座標に対応付けます。これにより、基準点(マンホール等)から損傷までの実距離と損傷の実寸法を定量的に出力できます。
期待される効果
- 補修工事の掘削位置を高精度に特定できるため、無駄な掘削を削減
- 点検員の熟練度に依存しない、客観的・再現性の高い点検記録の実現
- 管渠部材単位での損傷特定により、維持管理計画の精度向上
- 浮体(流水に乗せた移動体)を活用した点検にも対応し、人が入れない環境でも安全に実施可能
今後について
iishinaは引き続き、3Dスキャン・SfM・AIを組み合わせたインフラ点検ソリューションの技術開発を進めてまいります。本技術に関するお問い合わせは、下記よりお気軽にご連絡ください。